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漢方の基礎

カワムラ薬局 河村 昭

〈 第二回 〉

 漢方の大家であるS先生が、日本の漢方について「古方」「後世方」「中医学」「現代医療の中で用いられる漢方方剤」の四つに分類されていた。このような大雑把な分類で紹介がすんでしまうところに日本の漢方の貧しさがあらわれているように思われる。

 一番目の「古方」は、古代中国、後漢の「傷寒論」を唯一、絶対のテキストとし「傷寒論」以外の凡百の医学書を、嫌悪と軽蔑をかくさないで峻拒し、ほとんど信仰に近い傾倒のしかたで研究と実践をされている誇り高いグループである。もっとも「古方」派であろうとなかろうと「傷寒論」が間違いなく人類の宝といってもいささかも誇張ではなく、ある清澄な高みに達した希有な医学書であることは間違いないと思う。この「古方」派が日本では主流になっているとS先生はコメントされている。漢方に興味をもたれる方はまずほぼ2000年昔の中国の古典を一度とりあげてみられるのがいいと思う。

 第二の「後世方」はこれに対し、中国古代の前漢の時代に成立した医学書である「黄帝内経」の思想の中に生まれた「陰陽五行説」「臓腑経絡説」などの理論をもって構成されている。広大な中国の長い歴史の中で、この医療は練り上げられ深く肥沃になった。具体的には厖大な処方群としてわれわれの前にある。

 さて、三番目に分類された「中医学」だがすこし広い目でとらえることにして、WHO(世界保健機構)では現在世界に存在する医学を二つに分けて、中医学を現代医学に対する伝統医学と位置づけて、一定の評価がされている。言葉をかえると、高度にすすんだ科学技術に結びついた「実験医学」に対して、豊かな治療経験にもとづく「経験医学」として認められている。

 ところで私は、古方や後世方を勉強してみたが、理解力の弱いせいもあるだろうがなかなか納得が得られず、勉強すればするほど、ますます迷いの霧が深くなるばかりで途方に暮れていた。ちょうどそのころたまたま紹介され始めていた「中医学」に一縷の希望を託して入門することにした。といっても次々に翻訳される中医学の本を手あたりしだい求めてはとにかくかじってみたのである・・・・・・。結論からいえば、私は中医学の中に強い構成力を見いだすことができると思う。

 S先生の冷静で客観的な中医学の紹介で言われているように「後世方」に近い内容というのは一面正しいが、「中医学」の特徴は「後世方」も「古方」も鍼灸医学をも包みこむダイナミックな構成力にあることをもう少しお話ししたいと思う。

(広報誌「清流」第38号(1998.3.15)より)

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